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第一四章

<K.G 作>
〜悪魔の再来〜




私は何時間寝ていたのだろう?何か大きな物音で目を覚ました。
「う〜ん・・・。九瀬さん、エリス、今何・・・。」
時間を聞こうと辺りを見回すが二人の姿は無い。しかもそれだけではなかった。外が赤い。
「えっ?まさか・・・。」
私は、急いで外に出た。すると・・・世界が変わっていた。
「こ・これって・・・。戦闘!!」
私が寝ている間にこの中立の村、ノイトラールで戦闘が起こっていた。銃声が聞こえ、人々が逃げ惑う。さっき
の音は爆発だった。民家が燃え上がっている。私はとりあえず、二人を探す事にした。だが、あまりウロウロ
は出来ない。私は辺りに注意を払いながら、村の中心部へと向かってみた。その途中で、村人に出会う。
「助けてくれ!!戦えるんだろ?早くやっつけてくれ!!」
「私は衛生兵です。戦えません。」
「来たぞ!!」
私の話を無視して走り去っていく。そのすぐ後に兵士がやって来た。
「おい!!衛生兵!!早く持ち場に戻れ。」
「えっ、あっ、はい!」
どうやらここに来たのはタルキ軍のようだ。私は、兵士と別れると中心部に向かう。しかし、そこは激戦地だった。
私が着くと、一人の兵士が私の所まで走って来る。
「衛生兵。治療してやってくれ。瀕死の状態だ。」
私は、今までの衛生兵としての持ち場にいきなり戻ることになった。
「すみません。戦況は?」
「ブルツーナと戦闘中。こっちは圧倒的不利だ。この村に追い込んで、全滅させるつもりのようだ。」
「では、最前線なのですか?」
「そうだ。この前の戦闘で全滅した部隊の変わりに来たんだよ。」
「ありがとうごさいます。治療しますのでお戻り下さい。」
「頼んだぜ、衛生兵さん!」
兵士が持ち場に戻ろうと走り始めた時だった。兵士は撃たれて一瞬で死に至った。私は、感傷に浸ってはいられ
なかった。ブルツーナはそこまで迫って来ている。必死になって走る。そのすぐ後にロケット砲がさっきまで私の
いた所に落ちて爆発。さっき治療していた人は助からない。
「また悪夢が始まるのね・・・。」
私は、急いでこの村を出る事を考えた。エリスの家があったであろう場所に戻るが、何も残っていない。当然バイク
も。私は、走って村を出ようとした。しかし・・・上空を飛行戦艦が通り過ぎる。
「まさか・・・爆撃!?」
私の予想通り、飛行戦艦はノイトラールを爆撃し始めた。Z-6を大量に落とす。爆風が一気に村を襲い、建物と炎を
消し去る。私は、吹き飛ばされ意識が飛んだ・・・。
−数時間後−
私は意識が少しづつ戻り始めた。
「しかし、どうする?このままこの村にとどまっても、どうせ両軍にはさまれて我々はおしまいだ。いっそどっちかに味
 方したほうが・・・。」
「それでは今まで戦ってきた意味が無いではないか。支配に屈しないのが我々の考えだろ。」
「しかし、死んでは意味が無いではないですか。」
どうやらまた私の周りで議論していた。私は生きている。あの爆風なら死んでもおかしくなかった。奇跡に近い。
「私は、戦います。」
この声・・・。
「オレもやるぜ。両方の国の主張はずれてる。なら、オレたちで平和をつかむしかない。」
「うぅ・・・。」
私は目を覚ます。みんなが私の周りにやって来た。
「大丈夫か?よく生きてたな。」
私の目に真っ先に入ってきたのはエリスだった。九瀬の姿もある。
「ほんと・・・自分でも不思議・・・。」
「良かったよ。でもどこにいたんだ?」
九瀬が私に尋ねる。私は気絶する前の状況を説明した。
「そうか・・・。いきなり戦闘に参加したのか。それは辛かったな。」
「今どんな状況に?」
「さっきの攻撃の後、両軍はノイトラールを出た。だが、また戻ってくるだろう。ここは中継地点にされてるようだ。」
「そうですか・・・。止まらないですね。私たちの時は。」
「ああ・・・。」
その時エリスはみんなに訴えかけるように言う。
「オレたちは戦うべきだよ。このまま逃げてばかりはいられない。」
私は起き上がる。エリスは手を貸そうとするが、私は払いのけて立ち上がる。
「戦う意味はあるの?私はもう戦いたくない。あんな光景を見せられて・・・。何が戦争よ!!私はこんな事の為に生
 きるのはもう嫌。」
「しかし、ミュレル。君はこれからどうするつもりだい?」
「タルキに戻る気なんてありません。私は、ここで平和に暮らします。」
「でも、今は平和じゃない。いや、平和が脅かされているんだ。それでも君は戦わないのかい?」
「・・・。」
私は返す言葉が無かった。九瀬は続ける。
「戦わないで済む世界なら戦争なんて起こらないさ。みんな平和を望んでる。だが、今は戦わなければみんな死ぬ。」
「九瀬さんの言う通りだ。オレだって戦う気はない。でも現にこの村は攻撃されているんだ。占領されるがままが平和じ
 ゃない。オレたちは自分達で平和をつかむんだよ!」
私はそうしなければ生きていけないのかと自分に問いかけていた。その時だった。
「おい!ブルツーナが帰って来たぞ!」
やはり待ってはくれなかった。私はもう戦う方向へと進んでいた。
「行くぞ。」
エリスは私にそう言って銃を私に渡す。私はその銃をずっと見つめていた。すると銃声。
「もう始めたの!?」
私は建物の外へ出る。どうやら私がいたのは地下だったようだ。外に出て私が目にしたのは・・・。
「エリス!!」
私はとっさに倒れていたエリスの所へ走る。ひどい出血だった。
「ミュレル・・・。」
まだ息はあった。私は応急処置をしようと自分の服を破ろうとする。しかし、エリスが
「やめろ・・・。逃げろ・・・。ミュレルだけは生きてくれ・・・。オレはもう助からない・・・。」
「だめ、死んじゃだめ!!」
「早く・・・逃げろ・・・。来る・・・。」
「嫌!!私は・・・」
その時だった。ブルツーナの兵士がやって来る。
「おい!!そこの女!!」
私はとっさに銃を構えて撃っていた。兵士が倒れる。その音で他の兵士がやって来る。
「動くな!!」
あの時の情景が脳裏をよぎる。肩を撃たれたあの平原の光景が思い出された。悪魔の再来だった。
「ほぅ・・・女か。」
兵士達が道をあけ、そこから出てきたのは隊長クラスの人間だった。
「おい。連れて行け。」
「この人も・・・この人も一緒に・・・」
私はエリスを見た。すでに息はなかった・・・。
「エリス・・・。どうして・・・どうして・・・。」
「墓を作ってやれ。行くぞ、女。」
私はブルツーナに捕まった。私はどうなるのだろうか。
「おい。撤退だ!!」
私は車に乗せられて、連れて行かれる。この先に私の希望などなかった。車はブルツーナの基地に向かう・・・。


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