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第一章

<K.G 作>
〜残酷という世界の中で〜




新世紀・・・。人々に平和の2文字は、いまだに訪れていなかった。ここは、戦争の世界・・・。
武器が大量、そしてミサイルと戦闘機が飛びかい町は荒廃しきっていた。
−タルキ共和国ー
ここは共産主義の政治が続いていた。十数年前、資本と共産の大衝突が起こる。
資本側53ヵ国、共産側49ヵ国で世界が戦争一筋になっていた。
結局資本側に勝利に終わり、共産国は、徐々にその数を減らしていった。
しかし、このタルキだけが根強く共産主義を通していた。
そして、そんな中僕、ルイス=マクレンガーが生まれた。
僕は、今10歳、普通なら学校に行って楽しく過ごすのに、僕はマシンガンと手りゅう弾を持って死の入り口へとかり出されていた。
僕に親はいない・・・。
兄も僕が3歳の時に戦場に出されそのまま帰らぬ人になってしまった。
しかも、科学の発展の伴いロボット技術の投入が始まり、コンピュータ化された防衛システムは、攻撃目標をはずす事はない。
人間はその管理にのみ利用されていった。
−共和国首都オリベールー
「我々が正義だ。資本主義に屈することは許されん!!」
タルキ共和国上層部政府軍の行進。僕はその光景を高台の上から見ていた。
「全く。すぐ大人はああやって自分を認めて他人を認めようとしない。」
僕の横には相棒のニッキーがいた。ニッキーも僕と同じで親兄弟がいない。
ニッキーの性格は結構ストレートに物事をしゃべりどんな相手に対しても本音で話す。
一回兵士に向かってお前らはこれでいいのか?と問いかけた事もある。
とても偉い学者のような口調で淡々と語る姿はとても同じ歳とは思えない。
しかし、僕はそんな彼に尊敬の念をもったくらいだ。
「本当大人って自分勝手だ。もう共産主義なんて古いのに・・・。
こんな思想をを貫き通そうとして何人の人間が踏み台にされたことやら。」
下では、行進している人々に声援を送る人々でいっぱいだった。しかも、大人ばかりである。
僕は、このままではこの国は植民地にされると思った。植民地にならなくとも多数の死者が出ることは明確だった。
「行くよ。こんな国からはおさらばするんだ。」
ニッキーはショットガンをかついで高台から降りる。僕もマシンガンをもって続いた。
いつの間にやら、子供達の人数が30人近くになっていた。みんな武器を持って、目指すは国境である。
−共和国国境;死の壁ー
なぜこんな名前がついたかというと、共和国は衝突が続いていた当時徴兵を行い、10歳以下の国民以外は連れていかれた。
それに不満がある者は、この国境のシンボルであるこの壁の前で殺される。
昔の残虐な行為がこの国の風習とまでなってしまった。
その壁に今僕らが立っている。
その門番もようにそびえ立つ壁は、並の高さではないように感じた。
そう・・・。この国を覆うかのように・・・。
「行くぞ。ルイス。他の者は待機。」
ニッキーがいつのまにやら隊長になっていた。二人はゆっくりと歩きだす。
僕も途中で物陰に隠れてニッキーの援護に転じる。
するといきなりマシンガンの殻を破るような音で半分眠っていた脳が目を覚ます!!
「ニッキー!!ゲートだ!!」
僕はとっさにそう叫んでみんなに気付かせてゲートと呼ばれる防衛システムに攻撃する。
このゲートとは死の壁に取り付けられた最強防衛システムだ。
従来はガーターというシステムが主流だが、さらにそれを上回る耐久力を持っている。
こいつは施設の壁や国境の手前に多く設置され、陸海空そして宇宙にも対応している。
しかし、伝達回路を破壊すれば簡単に止まる。ある意味簡易的である。
僕はゲートにマシンガンを撃つ。大したダメージにはならないがやらないよりマシというやつである。
他の者も同じように攻撃するが、一人また一人と倒れて行く。
ついでにパレードで盛り上がっている奴らも来るので全滅は時間の問題かもしれない。
「強行突破!!」
僕の掛け声で全員が手りゅう弾を取り出す。僕はここで死んでも良いと思う。
だが、その思いは爆弾の雨あられで打ち消された。
「ん?あれは・・・?」
僕は、すぐさまみんなに逃げるよう指示し、爆撃機を確認する。
「あ・あれは・・・。ブルツーナ国軍!!」
ブルツーナ国。この国はかつてタルキと同盟を結んでいた隣国である。
しかし、終戦まじかに資本連合に滅ぼされ、植民地的地位に立たされた。
いまだに資本国とは言っても共産主義者が多くブルツーナが来るわけがないと一般市民も踏んであてにしていなかった。
だからまさかブルツーナが攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったのだ。
しかし今、ブルツーナは元同盟国タルキを・・・。
「やっちまえ〜!!」
一人が叫ぶとみんなも叫び始める。
空爆のサイレンが鳴り響く。ゲートも大破し、壁も大打撃を受けて崩れた。
みんなは、そこから出ようと必死になって走る!!しかし、そうすんなりと出ることは出来なかった。
後方から銃声。後ろの子が倒れる。必死で助けてと言っても誰の耳にも届かない。
銃声で後ろを振り向くと政府軍がいた。こっちに向かって撃って来る。
「早く逃げろー!!」
ニッキーは、ショットガンをぶっ放す。兵士も倒れ、そのまま死に至る。
僕も応戦した。他の子供を最優先にして。
しかし、それでも子供は死んでいく。何人残ったんだろう?
僕はそんなことを思いながら撃っていた。
兵士の数はいっこうに減らない。
「ルイス。逃げろ!!」
ニッキーの声が遠くから聞こえた。
「ニッキーが先に逃げて。後から行く。」
「バカ言うな!!オレが隊長だ。命令を聞け!!」
「この命令だけは聞けない!!」
僕は、マシンガンを相変わらず撃っていた。兵士がばたばたと倒れて行く。
「まだか・・・。まだ終わらないのか・・・。」
丁度その時一機のヘリが僕達二人の前に現れた。そのヘリは僕らを守るかのように僕らの前で地面スレスレを保つ。
「早く乗れ!!二人共!!」
僕とニッキーは言われるがままにそのヘリに乗った。
ヘリは僕らを乗せた後上昇し、国境を越えて飛んで行く。
「僕らの他に人は?」
僕は、隊長らしき男に聞いた。しかし、
「残念だが全員殺されてたよ。政府軍に・・・。」
「町の市民もですか?」
ニッキーも問い掛ける。
「ああ。君達以外に生存者は確認されてない。多分もう・・・。」
そう言いかけた時だった。ニッキーがその隊長めがけてこぶしを繰り出す。
その男はまともにそれを受ける。反撃が来ると思ったが、あてが外れた。
「まぁ、殴られるのは当然の報いだ。でもな、ああしないともっと死人が出る。」
「死人?そんな事だけで怒ってるんじゃねぇ。なんのためにてめぇらはここに来た。この国の解放か?」
ニッキーは、すごい剣幕で男に問い詰める。
「ああ。そうだ。だからこうやって攻撃を・・・。」
もう一発。男はこぶしを受ける羽目になってしまう。
「てめぇらは何にも変わってねぇ。この世界を変えたきゃ武器を捨てて戦え!!」
僕にはこの意味が分からなかった。どういう事を意味しているのかが・・・。
ニッキーは、それ以降黙ってしまう。
「大丈夫ですか?隊長。」
やはり隊長だったようだ。隊長は頬をさすりながら、ああ。とだけ答えた。
林の上をヘリはゆっくりとブルツーナに向かって進んでいた。だが・・・。
「隊長!!後方に巨大な物体が接近中!!あれは・・・。ひ・飛行戦艦です!!」
操縦士は、気が動転していた。
「タルキめ、あんな物まで作っていたのか。低空飛行で射程外を飛ぶんだ。」
ヘリは、木が当たるスレスレを飛行する。よほどテクニックがあるのだろう。僕は、関心していた。
「関心してる場合じゃないぞ。来る!!」
ニッキーは手近にあったロケット砲を撃つ。一応命中したがきいていないに等しい。
敵は100mm双射砲をこちらに向けて来る。
「君達。ここにパラシュートがある。これで逃げろ。君達には生きていて欲しい。我々ができなかった事をやってくれ。」
そう言って隊長は、パラシュートを僕らに着けさせてニッキーに、
「君に未来を託すよ。君なら世界を変えられる。この残虐という世界の中の唯一の希望だ。頼んだよ。」
そしてヘリは、一気に上昇し戦艦と並んだ。一番狙われる位置へと・・・。
「行け!!平和な未来を作ってくれ!!」
隊長は僕らの背を押した。僕らは、空に投げ出された。そのまま落ちて行く。次の瞬間ヘリが撃ち落とされる。
僕は、悲しいという感情が湧き上がって来なかった。そのまま落ちて死のうかと思ったが、
「パラシュートを開くぞ。」
というニッキーの声で我に返った。二人は無事地に足を下ろす。
「助かったね。」
僕のこの言葉は不謹慎なのにぽろっと出てしまう。ニッキーは、それを聞いて僕の胸ぐらを掴み上げた。
「よくそんな言葉を吐けるな!!」
僕もあの隊長と同じ目に遭った。
「大人は、バカだ・・・。本当にバカだよ・・・。」
ニッキーは、涙を流していた。ここはもういままでとは違う世界だ。そして今日からここで生きていく。
「ごめん。僕が悪かったよ。あんなこと言って。」
「オレに謝るな・・・。」
しばらくこの状態が続いた。そして彼の目の赤さが引いた頃、僕は彼に手を差し伸べた。
「行こう。新しい世界へ・・・。」
彼もうなづいて立ち上がり、二人で林の中を明日へ向かって歩いた。


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