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第五章

<K.G 作>
〜止まらない火種〜




僕達はまたもやグリー=ゴールニックの屋敷にやって来た。飛行戦艦を落として僕達を助けてくれたそ
の人の世話に再びなってしまうとは・・・。
「さっきはありがとうございました。お陰で少し命が延びました。」
「ルイス。お前そんな事言ったらもうすぐ死ぬって言ってるように聞こえるぜ。」
「ああ。僕はもうすぐ死ぬ。きっとな。」
ニッキーは呆れた顔をする。
「まぁそんな事を言わずに。あれは最近ここの上空をよく通るようになった艦で市民も迷惑していたん だ。それに君の命も助けられて良かったと思ってるよ。」
今の言葉はフォローになっていたのだろうか?
「少し休むといい。ナナミ、ルイス君達を部屋に案内してあげてくれ。」
「はぁい☆こっちよ。」
ナナミの案内により僕達は一つの部屋に連れてこられた。
「少し狭いけど我慢してね。」
ナナミはドアを開け僕達を招き入れた。
「さすが貴族の屋敷だけあるなぁ・・・。」
そこはブルツーナの高級な品々が置かれた豪華な部屋だった。
「ここで休んで。起きたらさっきのリビングに来てくれたらいいから。」
「ありがとう。少し休ませてもらうね。」
「うん。ゆっくり休んでね☆」
ナナミは部屋をあとにした。
「さぁて。寝るとしますか。」
ニッキーはベッドに入って寝る気満々。僕はベッドには入るものの寝れない。
「お休みルイス。」
ニッキーは早くも寝始めた。
「うん。お休みニッキー・・・。」
〜ブルツーナ国会議場〜
ブルツーナ国では年に3回もの召集会議を行う。このうち最初で予算、政策方針、現状報告とそれに対 しての対策が主に審議される。そして今回は2回目。ここでは最初の方針通りに進んでいるのか、改善 の必要があるのか、そして年の軍事費の分配が決まる。代表者は12人。
「さて、今我が国は隣国タルキの攻撃と侵略に対抗するべく急速で防御システムの開発に力を入れてい るわけだ。そこで前作のゲート製作者であるグリー=ゴールニック氏を招き、さらなるシステムの開 発について話して頂く事にする。よろしいですかな?」
「その前に一つお尋ねしたい。なぜ敵も私が作ったゲートを使用しているのです?」
「それは今議論すべき時じゃないでしょう。発言を控えて頂きたい。」
一人の議員がグリーにそう発言する。
「・・・分かりました。では新開発の防御システムについての説明を始めさせて頂きます。」
グリーは説明を始めた。代表者が真剣な眼差しでグリーを見つめた。
「まず断っておきますが、このシステムは外に漏れたら問題になる危険な物であります。」
議場がざわめく。中にはやめろと言う者までいる。
「しかしゲートよりも性能の良い物は全て危険と言わざる負えない!!あなた方はそれを承知でこれの 設計・製作を許可しているはずです。」
「で、どのような危険が伴うのかね?」
議長がグリーに尋ねる。
「はい、このシステムは自己判断が可能なAIを搭載しております。それに万一に備えて自爆装置も内 蔵しています。」
「それのどこが危険なのかね?」
「先に説明を。一応タイプは人型と砲台型とありましてゲートに変わる物として最適です。しかし、こ の二つのタイプどちらも動力部に核ほどの威力を持つ燃料コアを持っておりまして・・・。」
「核だと!?」
「そう言ってもらっても結構です。核兵器自体は先の戦争で99.8%が消滅しましたが核燃料の生成 方法が一部残っておりましたのでそれを使う事に・・・。」
「なぜ核なのだ!?核はもう世界で使用禁止なのだぞ!!」
「核ではありません。それに近い類似品と思ってくれればよろしいのです。」
先の戦争。現在の二国間戦争より十数年前の核兵器戦争の事だ。資本国は核抑止力を信じ過ぎた。共産 勢力を押さえる為に一国の核兵器保有数上限を45と定め最低5つは持つよう義務づけられる。この協 定は秘密裏に進められそして共産国と開戦。共産国を3日で全て降伏させると宣言し、資本国から大量 の核が共産国へと降り注がれた。しかし、すでに秘密裏の協定を察知していた共産国は核の目的地プロ グラムにアクセスして自国をリストから削除したり事前に基地攻撃をして核兵器を鉄くずに変える等し て核攻撃から免れていた。資本はこれ以外の準備が不充分だった為戦争は長期化する。最後は資本国が 勝利し今に至っている。
「だが、その方法が記してある書類は?あれがあれば世界立法に引っ掛かる。」
「すでに破棄してあります。ご安心を。それにその類似品は基本構造からしてほとんど新しい物。簡単 には分かりません。」
「では、代表者で質問がある者は?」
一人だけ手を挙げたので議長が当てる。
「ミッシュ=スワレーンさんどうぞ。」
この代表者の中で一番若いミッシュがグリーに尋ねた。
「その欠点以外のシステムに関しては基本的にゲートと同じなわけですね?」
「ええ。多少装備に差がありますが・・・。」
「ならば結構。議長。私はこのシステムに賛成します。」
「とにかく多数決で決めたいと思うのだがよろしいかね?」
議長の考えに皆賛成のようだ。
「では用紙を回す。賛成か反対かを書いて提出してくれ。」
代表者12人は紙にどちらかを書いて議長に提出。議長がそれを集計し答えを出した。
「ではこの案は可決された。グリー君後は頼んだよ。」
「はい。任せて下さい。」
グリーは新たなシステムを認めてもらい、これの着手に乗り出した。
「しかし議長、これで良かったのですか?」
代表者の一人グラッツェ=シュトムーゼンが議長であるワイバーン=ドレイクに尋ねた。
「あれでいいのだよ。その方が行動に出やすい。それにこれからはブルツーナも攻撃される。ああいっ た防御は必要不可欠なのだよ。」
「グリーは貴族市でこれを製作しようとしています。貴族市が強固になれば我々の行動が阻害されるの では?」
「だから行動に出やすいんだよ。完成寸前でのグリー暗殺がな。」
「ワイバーン様それは・・・!!」
「おい、ここで様付けはやめろと言ったはずだ。フフフ。なぁに、元々の目的は達成される。そうすれ ばバルダス様もお喜びになり、これからの戦況に有利になる。」
「そうですね。では早速暗殺部隊を貴族市へ送り込みます。」
「頼んだぞグラッツェ。」
「はっ!お任せあれ。」
グラッツェとワイバーン。どうやらブルツーナの人間ではなさそうだ・・・。
〜ゴールニック邸〜
僕は目が覚めた。どうやら3時間ぐらい寝ていたようだ。窓から外を見ると続々と逃げた人達が帰って きていた。隣でニッキーが寝ている事に気付き静かに部屋を出た。
「え〜っとリビングはと・・・。」
僕はゆっくり探検するようにリビングまでの道のりを歩く。リビングに着くとそこにはテレビを見てい るナナミの姿が目に入る。ナナミもこっちに気付いたらしく僕をソファまで呼んだ。
「どう?ゆっくり休めた?」
「あっ、うん。ありがとう。」
「何か飲む?喉渇いてるでしょ?」
「じゃぁ、水もらえるかな。」
ナナミが水を汲んでいる間僕はテレビのニュースを見る。相変わらず戦争の話題ばかりしていた。
「はい、どうぞ。」
ナナミが水を差し出してくれた。僕はそれを受け取ると一気に飲みほした。
「もう一杯いる?」
「ありがとう。もういいよ。」
僕はそう言ってコップをソファの前にあるテーブルに置くとニュースを再び見始めた。
「そんなに気になる?この国の情勢が。」
「えっ、うん。これからもっと大変になってくるし、それに何か嫌な胸騒ぎがするんだ。僕の思い違い だといいんだけど。」
テレビ画面に目をやりながら僕は会話をした。
「私ね、戦争ってあんまりよく分からないんだ。」
「知らない方がいいよ。僕もそう思ってる。人が沢山死ぬんだ。美しい物や尊い物が消えていくんだよ 戦争っていうのはね・・・。」
僕は少し涙目になっていたかもしれない。そんな感覚さえ失っていた。
「ルイス君はこれからどうするつもり?ここ出て行った後・・・。」
「僕は何としても戦争を止めなきゃならない。僕一人ではどうにもならないけどせめて力にはなりたい と思う。ナナミや他のみんなに生きていて欲しいから・・・。」
「ルイス君。私ここに居て欲しい。ルイス君と一緒に居てこの戦争の最後を見たいの!!」
ナナミは僕にしがみ付いてくる。彼女は泣いていた。
「ナナミ・・・。僕は・・・。」
その時テレビ画面にさっきの会議の模様が映し出された。
「三時間ほど前に決定したこの決議はゲートに変わる新システムらしくこれから実用化に向けて貴族市 製作にあたるという事です。」
「何っ!!また新しいシステム作ったのか!!」
僕は驚くしかなかった。あれだけ外に出て問題だと言ったのにまた作ってしまうとは・・・。
「ニッキー!!」
僕はナナミを跳ね除けニッキーの寝ている部屋に行く。
「ニッキー!!起きろ!!」
「ん〜?何だよ?」
「ここを出るぞ!!急げ!!」
「どうしてだよ?まだそんな急がなくてもいいじゃんかよ。」
「ここに居ても何も解決しない!!とにかく首都へ急ごう!!」
「分かった分かった。少し待ってくれ。」
ニッキーが支度をし終わりいざ出ようとしたその時にグリーが帰宅する。
「ルイス君は何処にいる?」
「きっと寝てるわ。」
「どうしたナナミ?気分でも悪いのか?」
「パパが悪いんじゃない!!パパがあんな物作るから戦争が終わらないのよ!!」
そこへ僕達がやって来た。
「ルイス君・・・。」
「グリーさん。ブルツーナ国の首都に案内して頂けますか?」
「ルイス君、君は何を、何をしようというのかね!?」
「何を?戦争を止めにですよ。この残酷な世界の発端をね。」


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