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第一一章

<K.G 作>
〜戦禍の時〜




―ぺスカ―
「タルキはまだ仕掛けてきませんね。」
僕はゴンボースにこう言った。
「全くだな。どうせ敵は応援を呼んでいるんだろうよ。本国からここまで最低でも半日はかかる。」
「ニッキー、準備は整ったかい?」
「ああ!!いつでもオッケーだぜ。」
ニッキーは親指を立てながらそう言った。僕はそろそろ来ると感じていた。
―タルキ軍本陣―
「さて、援軍はそろったな。これよりぺスカ攻略に向かう。」
タルキはぺスカへ向かって進軍を始めた。戦車や歩兵だけじゃなく自走砲や野砲まで配備して本格的に おっぱじめるつもりだ。
「爆撃機の準備は?」
「整っております。いつでも爆撃可能です。」
「まずは市街地に潜入し、ある程度の戦力を削ぐ。いったん撤退し、そのスキに爆撃で一気にたたみか けるつもりだ。」
「結構ありきたりな戦術ですね。」
一人の兵士が指揮官にそう言ったら
「ありきたりな戦術で十分だ。奴らは何も出来ん。」
タルキ軍はぺスカに向かって動き出した。到着まで半時間もかからない。
―ぺスカ―
「ルイス。偵察してる奴がタルキが動き出したって言ってるぜ。」
ニッキーが僕にそう告げた。偵察をしておいて正解だった。とりあえずゴンボースを呼んだ。
「来たのか!?」
ゴンボースの問いに僕はうなずいて応えた。
「とりあえず歩兵部隊みたいだけど・・・。これはどういった作戦だ?」
ニッキーは気にしているようだ。僕は淡々と答えた。
「単純だよ。歩兵で確実に戦力を削ぐ。その後でこっちがばてている間に爆撃して一気に落とすつもり だ。歩兵だけとは限らないな。戦力を大きくみせるために野砲や自走砲を取り入れてるはずだ。」
「じゃぁ、現時点では勝ち目ないじゃんかよ!!」
「ニッキーの言う通りだぜ。これじゃ成す術がないじゃないか!!」
「いえ、ゴンボースさん。これがあるんです。ニッキーがさっきあるだけの爆弾を廃墟ビルの柱に付け てきました。ここを部隊の中心が通った時に爆破し、部隊を二分させるんです。中心はビルの下敷き となり、残りは二分される。そこを前方から叩けば何とかなると思うんです。」
「失敗は許されねぇな。とにかくその作戦で行こうぜ。」
「で、ゴンボースさん。できるだけ多くいるように見せたいんですよ。何とかなりませんか?」
「沢山ねぇ・・・。ニッキーは何かあるか?」
ゴンボースはニッキーに尋ねた。ニッキーは少し考えて、
「今ある量の武器だけじゃ多く見せられないな・・・。」
「そうだな・・・。現時点では沢山に見せられないな・・・。」
僕達は悩んだ。しかし、答えなどすぐには出ない。その時だった。
「来たぞ!!奇襲部隊だ!!」
「思ったより早かったな。」
―グリー達はというと―
「とりあえず逃げ切れたな・・・。」
トラックを運転しながらグリーは言った。
「どうするの?」
ナナミはグリーに尋ねた。
「これをペスカに届けなきゃならない。ナナミは途中で降ろす。」
「えっ、私も行く!!だってルイス君が戦っているんでしょ?私も何か手伝いしたいよ!!」
「しかしだな・・・。」
その時だった。サイドミラーにトラックの姿が・・・。
「やばい!!追っ手だ!!ナナミ、隠れてくれ!!」
グリーは大きくカーブして追っ手の姿を肉眼で確認する。しかし、それは追っ手の姿ではなかった。
「グリーさん!!私です!!ブリュワーズですよ!!」
ブリュワーズ=グロスキン。貴族市出身で現在はシューレで機械の修理を行っている。グリーとは幼い 頃からの友人でグリーをゲートの専任顧問に推薦したのもブリュワーズだった。
「何でここにいる!?」
「グリーさん、私も手伝わさせてください!!」
「ブリュワーズ!!」
「はい!!何ですか!?」
「敬語は使うな!!」
すると後ろからどんどんトラックの数が増えてきた。最終的に五台になった。
「この人達は!?」
「私が呼んだんですよ。グリーさんの演説にみんな賛同してきたんです!!」
グリーはそれを聞いて驚いた。まさかここまで波紋が広がるとは思っていなかったのである。
「やって正解だったね☆パパ!!」
ナナミは嬉しそうにグリーに笑顔を振りまいた。
―ペスカ―
ここはすでに戦場と化していた。必死で戦うペスカの人々。だがやはりタルキにかなうはずもなく少し ずつ後退して行った。
「ルイス!!市街地に誘いこむぞ!!」
ニッキーが僕にそう叫んで後退した。僕もニッキーのように市街地へ入る。
「ニッキー何処だ!?」
僕はとりあえず廃ビルへ行った。窓から市街地の様子をうかがう。タルキの兵士が銃を撃ちながら進ん で行くのが見える。そろそろあの作戦が始まる。そう思った矢先だった!!漆黒の物体が空を不気味に 駆け巡る。
「まさか、空爆部隊!?まだ奇襲部隊が撤退してないのにか!?」
タルキ国所属の漆黒の爆撃機は爆撃を開始した。タルキ国が所有しているのはZ−6。こいつは今までの 爆撃に使われた爆弾とは少し違っていた。周囲1000mに爆風が起こる。それで全てをはじき飛ばす!! 僕は落ちてくる爆弾が新しいものだと判断した。
「新型!?やばい!!ニッキー!!逃げろ!!」
僕は大声でそう叫び廃ビルの外へ急いで逃げる。その時に落ちた!!一気に爆風が僕を襲う!!
「不発!?」
僕はそう言いながら落下したと思われる地点から離れる。次の瞬間二度目の爆風が僕に襲いかかって来 た!!この爆弾は爆風で建物をなぎ倒すものらしい。僕はとっさにしゃがみ込んで爆風から身を守る。
「なるほど・・・。だから今爆撃しても支障はないってことか・・・。」
僕は起きあがり走る!!この先で銃声が聞こえる。僕は銃を構え建物の影から様子をうかがった。
「敵の数は4。」
僕は銃をぶっ放しながら敵の中へ突っ込んで行く!!兵士の一人が気付きこっちへ銃を向けるが遅い! 僕は手前の兵士を撃って倒し、次の兵士の足を払うとその先にいる銃を向けてきた兵士の銃弾をかがん でよけると同時に撃ち倒し、さらにその先の兵士には体当たりで地面へ落とす。僕は即座に起き上がっ て足払いで倒れた兵士から順に撃ち、全滅させた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
僕は息が切れるのを感じながら彼らを見下ろしていた。後ろでは戦闘が続いている。止まらない戦禍。 そして流れる血。繰り返される悲劇・・・。
「早く・・・終われ・・・。こんな戦い・・・。」
僕は次の戦場へと移る。二回目の爆撃が始まった。そんな時だった。
「ルイス!!こっちだ!!」
ニッキーの声がする。僕は声のする方へ走った。ニッキーはゴンボースと一緒にがれきの影に隠れてい た。僕は他の仲間の事を聞いたが二人しかいないと答える。結局、僕達三人以外はみんな消えていって しまった。
「爆撃が始まったからな。とりあえずここに隠れているわけだが、いつやられるか分からん。」
ゴンボースのいう事は最もである。何とかしなければ・・・。
「やばい!!ここに落ちるぞ!!」
ニッキーがそう言って走り出す!!僕達もニッキーに続いた。
「くっ!!逃げ切れねぇ!!」
Z-6はゆっくりと爆風を巻き起こす!!僕達はその風に流されていた。持っていた武器も飛ばされる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
おさまった時にはペスカの面影はついに無くなってしまった。それに続いてがれきの山の裏手から兵士 の足音が聞こえて来る。
「兵士が攻めてくるぞ!!まだいる事を知ってやがる!!」
僕達はその辺りに落ちている武器を拾い集め攻撃に備えた。兵士の足音が大きくなってくる。
「来るぞ。用意はいいな。」
ゴンボースは僕達に聞きながら構える。
「はい・・・。」
そして・・・。爆発が起こった!!本格的な爆撃の開始である。僕達は動く事などしない。
「始まったぜ。俺達の死への歓迎がな。」
死を覚悟した僕等を祝福するかのように爆発があちこちで起こる。
「さて、行くぜ!!」
僕達はがれきの裏から姿を現した部隊に先制攻撃を仕掛ける!!倒れる兵士などほとんどいない。
「いたぞ!!」
「撃ち殺せ!!」
兵士達の攻撃が一斉に開始され、僕達は逃げるしかなかった。反撃もむなしいだけである。
「駄目だ!!逃げるな!!」
僕はそう叫んで二人と反対方向へ、部隊がいる方向へ走りだす。
「ルイス!!」
「おい!!ルイス!!何考えてる!?」
「早く逃げて!!ここは僕がくいとめる!!」
僕は二人の声を無視して部隊の中へと突っ込んで行く!!銃を撃ちながら最後の抵抗!!となるはずだ った。いきなり部隊がいた辺り一帯が爆発し、僕は吹っ飛ばされた。
「あれは・・・!!」
ニッキーが指したその先にはかつて僕達がタルキで戦った鉄の門番・・・。
「ゲートが届いたか!!」
ゴンボースは気絶した僕をひっぱりつつ言った。
「何!!ゲートだと!?」
兵士達は動揺を隠せない。ゲートはゆっくりと敵部隊を殲滅してゆく。爆撃機までも落としてしまう。
「やったぜ!!大逆転だ!!」
ペスカに駐留していた部隊は全滅し、爆撃機も大半が撃墜された。
「やっと終わった・・・。」
ニッキーは座り込んだ。そしてトラックからグリーとナナミが降りて来る。
「グリーさん、助かりました。」
「遅すぎました・・・。ペスカが・・・。」
ペスカは崩壊した。がれきの山と化してしまった。
「仕方ないでさぁ。また一から再建し直しますよ。」
ゴンボースとグリーが話をしている間、ナナミは気絶した僕を見て泣いていた。
「ルイス君・・・。」
「気絶してるだけだから大丈夫だよ。ナナミちゃん。」
ニッキーはそうナナミに言うが聞いていなかった。戦いは終わった。だが全ての終結には遠い・・・。


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